レベッカ・ヤロス著『フォースウィング 第四騎竜団の戦姫』を読了しました。
「第2のハリーポッター」とも評される本作ですが、軍事大学が舞台となり、竜と騎手の関係を軸にした独自の世界観が展開されています。
今回は主人公ヴァイオレットの成長や人間関係、そして物語から得た気づきについて綴りたいと思います。
強さと知恵を持つ主人公

この物語で特に共感したのは、主人公ヴァイオレットの「本を愛する」姿勢です。
亡き父からもらった寓話集を大切に持ち歩き、彼女が力を発揮するときの「世界」も本に囲まれた場所として描かれます。
これは彼女の核となる部分を象徴していて、彼女の本質を表していると感じました。また、彼女の根性と少しの反抗心も魅力的です。
20歳まで書記官を目指してきた頭脳派で小柄な女性が、突然武闘派の道に入るというハンデを背負いながらも、目の前の壁に立ち向かう姿勢に感銘を受けました。
規律を完全に破るわけではないものの、目的のためにリスクを取り、計画を行動に移す大胆さを持っています。
本文中でゼイデンに「生意気」と評される部分にも、彼女の芯の強さが表れています。
登場人物の紹介
ヴァイオレット・ソレンゲイル
本作の主人公。20歳の女性で、司令官の娘。バスギアス大学の新一年生。
元々は書記官を目指していたが、母親の命令により騎手科の試験を受けることになる。
ゼイデン・リオーソン
第四騎竜団の団長。三年生。高慢で冷酷な性格だが、抜群の戦闘能力と戦略眼を持つ。
デイン・エートス
ヴァイオレットの幼馴染。二年生。第四騎竜団の分隊長の一人。
リアム・マイリ
ヴァイオレットと同期で、学年一の優秀さを誇る候補生。
ある事件をきっかけにヴァイオレットの護衛役を担うようになる。
リリス・ソレンゲイル
バスギアスの司令官。ヴァイオレットの母。
厳格な性格で、娘に対しても容赦がない。

成長と葛藤
入学当初は書記官への未練が強かったヴァイオレットですが、様々な試験(試練)に挑むたびに、体つきや動きが竜に乗って戦うための戦闘向きに変化していきます。
元々頭脳派だった彼女は、体力不足という弱点を抱えながらも、辛い鍛錬を重ねるうちに「騎手候補生」としての自覚を深めていきます。
特に印象的だったのは、彼女が認めたくなかった感情や考えを少しずつ受け入れていく過程です。
母親である司令官からの理不尽な命令で命の危険がある試験に臨むという過酷な状況に置かれながらも、現実と向き合い、自分の道を切り開いていく姿には共感と尊敬を覚えました。
級友との関係性

ゼイデンとの皮肉の応酬は読んでいて面白く、能力や上下関係などのあらゆる環境からくる緊張感のある関係性がリアリティを生んでいました。
それでも、個人的に特に心に残ったのは学年一の優等生であるリアムとの関係でした。
ある事件をきっかけにヴァイオレットの護衛を任されるリアムは、「同学年の生徒の護衛」という一見奇妙な立場ながらも、物事を俯瞰的に見て自分の判断で行動する人物として描かれています。
テンプレート的な「優秀だけど意地が悪い」ではなく「優秀で気のいい」キャラクターであるリアムは、読めば分かる、ヴァイオレットの真の友人でした。
命の危険が迫ったときには互いを守るために躊躇なく行動する二人の関係性には、様々な人に命を狙われる過酷な環境の中での友情が表れています。
軍事大学を舞台にした新しいファンタジー
この物語の中心には「竜と騎手の関係」があります。
竜が選んだ相手と関係を結び、竜からもたらされるエネルギーで騎手特有の力が使えるという設定にオリジナリティを感じました。
ハリーポッターと比較されることがありますが、呪文や杖、箒といった要素はなく、軍事大学が舞台であることから戦闘のための組織構造や人の動かし方に焦点が当てられています。
人間と竜、そして特有の力という3つの軸が複雑に絡み合う世界観が斬新で魅力的です。
心を揺さぶる終盤の展開と続編への期待

読了後には心を揺さぶられた感覚が残って、しばらく放心していました。
終盤の問題提起は、このエンピリアンシリーズの最初の転換点となっており、これからヴァイオレットがどのような決断をしていくのか、続きが非常に気になります。
他のファンタジー作品と比較して特徴的なのは、竜が人間を選ぶという一方向性と、竜に選ばれなかった候補生は落第扱いになるという厳しい価値基準です。
この世界の容赦のなさが、物語に緊張感をもたらしています。
『フォース・ウィング』が教えてくれる勇気と変革のメッセージ
私がこの作品から受け取ったメッセージは、当たり前と思っていることや前提となっていることが、実は権力を握る者によって描かれたものであって、必ずしも事実と一致しないかもしれないという可能性です。
前提がひっくり返ったとき、どう考え行動するかを問いかけられているように感じました。
また、自分の心に浮かぶ恐れを受け入れて、相手に伝えなければならないことを伝えることが信頼関係に不可欠だという教訓も得ました。
「信頼しているし、信じたい、大事だと思っているけど言えなかった」というシーンがあるのですが、それが関係に溝を作る結果になります。
「言わなかったこと自体よりも、自分は信頼されなかったことに傷ついた」というセリフは、人間関係の本質を鋭く突いていると感じました。

こんな人におすすめ
・ファンタジー×学園モノが好きな人
『ハリー・ポッター』や『アカデミーもの』が好きな人にぴったり
・強く賢いヒロインが活躍する物語が好きな人
非力ながらも、知恵と戦略で乗り越えるヴァイオレットの成長は、「賢いヒロインもの」の逸品
・ラブ×バトルの緊張感が好きな人
敵対関係から始まるヴァイオレットとゼイデンの関係は、緊迫感と恋の駆け引きが絶妙
おわりに
『フォースウィング』は、生と死がバランスよく描かれた壮大なファンタジー小説です。
命の危険と隣り合わせの厳しい世界で成長していく主人公の姿、そして彼女を取り巻く緊張感のある人間関係が魅力的です。
この世界の常識に疑問を投げかけ、変革の可能性を示唆する展開に、次巻への期待が高まります。ファンタジーの枠を超えた人間ドラマとしても読み応えのある一冊でした。
気になる方はぜひ読んでみてください。