坂木司さんの『ショートケーキ。』は、日常の中にある「ちょっとした幸せ」をふんわりと描いた短編集です。
甘さ控えめで、どこか心にしみる物語たちは、どれも優しくてほっとするものばかり。
登場人物たちは、すぐそばにいるような身近さがあって、読んでいるとなんだか応援したくなっちゃいます。
読むと、まるでほんのり甘いショートケーキを一口食べたような、心がじんわりと温かくなる感覚に包まれるんです。
そんな『ショートケーキ。』の魅力をお届けします!
一話ずつ違う読後感?甘酸っぱさがじんわり広がるストーリーたち
短編集なので、読んだ後の気分や心に浮かぶ感想はエピソードごとに違います。私が特に好きだったのは「ショートケーキ。」と「追いイチゴ」。
どちらも、登場人物が誰かをそっと見守りながら語られるお話で、読んでいるうちに、登場人物たちのことを応援したくなりました。
読み終わると、ほっとした気持ちになれて、日常の疲れがふっと軽くなるような感覚です。
「追いイチゴ」の登場人物が、「なにかあるとショートケーキに追加のイチゴを盛って食べる」というのですが、それがとても坂木さんらしい描写でユーモアがあるなと思いました。
「ままならない」で見つけた大切な気づきと、ほっとする気持ち
中でも印象に残ったのは「ままならない」というお話。子育てに奮闘するお母さんが、ちょっとだけ自分の時間を取り戻そうと奮闘する姿が描かれています。
「なんで『怒られる』って怯えてるんだろうね?」というセリフが心に残りました。自分を責めたり、周りの目を気にしたりするけど、実は誰も怒ってない。
そう気づいたときに、ふっと肩の力が抜けるような感覚がありました。読んでいて、母親の立場に共感するだけでなく、どこか自分にも通じる気持ちがあると感じられます。
カジモトくんに共感!ケーキ屋のアルバイトが教えてくれたこと
駅ナカのケーキ屋でバイトするカジモトくんのお話「ショートケーキ。」もお気に入りです。家族の体調が心配で、なんとなく沈んだ気持ちのカジモトくん。
でも、いつもケーキを買いに来る「天使」が楽しそうにケーキを食べようとする姿を見て、自分も元気をもらいます。
応援することで、自分も前向きになれる。そんな温かいエピソードに、思わず頷いてしまいました。
「天使」が見せる小さな頑張りに、自分の気持ちも自然と前向きに引っ張られる感覚で、読んでいるうちに応援したい気持ちが芽生えてきます。
坂木司さんの優しい語り口と、日常に寄り添うエピソード
坂木司さんの物語は、特別な出来事ではなく、日常の中にある小さな幸せや優しさを丁寧に描いています。
どの登場人物も、ほんの少しの勇気で日々をちょっとだけ良くしようとする姿勢が素敵で、自然と応援したくなります。劇的な展開ではなく、あたたかな空気感が心地よいのです。
この穏やかなテンポが、忙しい日常の中で癒しを与えてくれる。読むたびに、どこか自分のことのように感じられるのが魅力です。
『ショートケーキ。』が教えてくれる「ちょっとした幸せ」の大切さ
この本を読んで思ったのは、「ちょっとした幸せ」がどれだけ大事かということ。
何気ない日常の中で、小さな楽しみが実はすごく偉大なことなんじゃないかなと感じさせてくれます。たかがケーキ、されどケーキ。
甘くて甘酸っぱいショートケーキ(=日常の中の楽しみ)が、どれほど心を癒してくれるか、この本はそれを優しく教えてくれます。
何でもないような時間や行動が、自分を支えてくれる。そんな何気ないことの尊さに気づかせてくれるのが『ショートケーキ。』です。
えっ、そうなるの?と甘いだけじゃない展開も
オムニバス形式なので、それぞれのお話がどうつながっていくのかな?とワクワクしていたのですが、最後には「そうくるか!」という個人的には意外な展開もありました。
「お?この人とあの人の世界がつながったら、面白いのでは…?」などと期待していたら、ハッピーエンドにはならず残念でした…。(正直、「定番のショートケーキ」らしい、王道のストーリーを期待してしまいました。)
甘いだけじゃない、ちょっぴり意外性も楽しめるのが『ショートケーキ。』の魅力かもしれません。
登場人物同士の絶妙な距離感が、時には甘く、時には少し酸っぱい味わいを加えます。
まとめ|甘酸っぱさに癒される『ショートケーキ。』を味わってみて
『ショートケーキ。』は、日々の忙しさに追われている人や、ちょっとした幸せを見つけたい人にぴったりの一冊です。
どのお話も、ささやかながらも心に残るもので、読むたびに優しい気持ちになれます。
ちょっとした休憩時間に読み進めるだけで、日常の風景が少しだけ優しく見えてくる。
ぜひ、甘酸っぱくて心温まるこの短編集を手に取って、自分だけの「ちょっとした幸せ」を見つけてみてくださいね。